第3回~放牧のレイアウト~

放牧地をレイアウトする

放牧を始めるためには、まず牧区を作らなければなりません。
今回は、実際にその牧区分けをする手順について書いていこうかと思います。
前回のコラムで、昼夜放牧をする場合、1頭当たりに必要な面積は40a位と書きました。
例えば、50頭の牛を放牧するとなると面積は20ha必要になるということになります。
ここでは1日1牧区を基本として考えます。
牧区の配置は、畜舎を中心としたものにし、放牧した牛が帰りやすいように工夫します。

下にレイアウトの一例を載せました。ある牧場での実例です。
四角形の畑でない場合、レイアウトは少々厄介なものになりますが、航空写真を利用するなどすると比較的容易にレイアウトができます。

写真
レイアウトの一例
総面積はおよそ20ha
1牧区は1ha
○は水槽設置箇所
波線はゲートを表します。

外周に牧柵を張る

レイアウトが決定したらいよいよ牧柵を張ります。
外周部分の柵は牛が暴走しても安全なように、しっかりとした柵が必要になってきます。
家を留守にする場合や、夜間放牧をする場合も同様です。
そのために私はフェンシングワイヤー(高張力線)を使用することを薦めます。
一つの例として、インサルティンバー(絶縁木)を用いた電牧柵をご紹介します。

角に来る木柱(コーナーポスト)には写真のような太さが15cmのものを使用します。 フェンシングワイヤーの緊張に耐えるため、アグ・キーでは通常これらの柱を根深1m以上地面に立て込んでいます。

バトン(絶縁木)は地中に刺すことなくワイヤーに取り付けます。
ワイヤーを支えるため、7m間隔以内で取り付けていきます。※下部写真1
パーマネントポスト(絶縁木)は、バトンが四本以上入る長い距離の部分で使用します。
これは地中に打ち込み、バトンとつなぎます。全体の揺れを防止し、柵を安定させます。※下部写真2
バトンやパーマネントを取り付ける前には、必ず緊張具を使ってフェンシングワイヤーをしっかりと緊張してください。 そうしないと十分な強度を得ることが出来ません。

写真
写真1
実際のバトン取付け写真。
ワイヤータイで架線に固定。
写真
写真2
パーマネントの取付け写真。
冬季間は、つなぎ部分を外します。

以上が張り方になりますが、何のためにこのような張り方をするのかというのは、雪害を防ぐ為とゲート以外からの大型機械の出入りを可能にするためです。

パーマネントとバトンとのつなぎを外し、緊張具を緩めることによってバトン、ワイヤーは地面に落ちます。
こうすることでパーマネント間の距離約30mが通行可能になり、地面に線が落ちていることで、雪害によってフェンスが壊れるということもありません。
このような牧柵を張る利点としては、ワイヤーが切れにくく、固定されるパーマネント間に距離があるために、フェンス自体に弾力性があることが挙げられます。
さらに、使用している絶縁木は腐敗に強く、25年以上経過した牧柵でも交換の必要がないほど耐久性に優れています。
費用自体もバラ線柵と大差なく、2年以降の修理もほとんどありません。

今回は、牧区のレイアウトの話から外周に牧柵を張る話まで書かせていただきました。
実際牧柵のレイアウトをお考えの方はアグ・キーまでお気軽にご相談ください。
次回は内柵張りを含めた牧柵張りの、もう少し詳しい話をしようと思います。

五十嵐 勇