第8回~今こそ放牧を~

今こそ放牧を

季節も秋へと入り、冬に向かって少しずつ寒さも厳しくなってきました。
今回は、「今こそ放牧を!」という題で、コラムを書かせていただきます。

さて、引き続き濃厚飼料の価格が高騰しています。
その原因としては、濃厚飼料の主原料がエタノールに変わっていること、中国・インドなどの大消費地に輸出が向けられていることなどにあると、前回のコラムで書いたかと思います。
しかし、それも数年では終わらず、今後しばらくは続くだろうということです。

ついに濃厚飼料が1kgあたり80円を越す時代になりました。
更には燃料も高騰し価格は上がる一方です。
そのことはサイレージ、乾草調整、堆肥散布、スラリー散布にも跳ね返っています。
以上を考えた上で、北海道では草で搾ることが重要で、放牧がもっともコストを抑えることに繋がるのではないかと、私は思います。


今こそ放牧について考えるときではないでしょうか。
私は、牛が放牧地で飼育されてこそ健康で安全な牛乳が生産されるものと思います。

そんな中、今年も新たに放牧を始めた人がいます。
それまではスタンチョンで飼われており、パドックにもあまり牛を出されていませんでした。
放牧を始めてから僅か二ヶ月足らず、僅かではありますが乳量も増え、発情が良く見られるようになったとの事です。
ご本人も来年は期待できると喜んでおられました。

写真
きちんと整備・牧区分けされた放牧地に放される牛たち。
写真では分かりにくいですが、水槽も設置されています。
手前側に見えるのは、牧道です。

放牧には草地が大事

特に道東地区の話になってしまいますが、チモシー主体の草地が多いです。
ペレニアルライグラスは冬枯れに弱いため、道東での栽培に適さないためです。
しかし、チモシー主体の草地での放牧は難しく集約放牧を行っていくと、普通はチモシーが年々減少し他の草種や雑草が増加してきてしまいます。
通常ケンタッキーブルーグラスが増加してくる事が多いのですが、嗜好性もあまりよくないため秋には下の写真のように錆病が出てきてしまいます。

写真

上の写真のように、錆病が発生すると当然牛は食べてはくれません。

ではどのような牧草が向いているのでしょうか。
秋の放牧に向く牧草としては、メドウフェスクがあります。
これは、農業試験場でも勧められている草種です。
導入されている草地を見せていただいていますが、素晴らしい放牧地があります。
欠点としてメドウフェスクは春に硬くなりやすく厄介なこともありますが、少し強めの放牧をして掃除刈りをすることにより対応が可能です。

メドウフェスクを導入する方法には更新時に混播する方法と追播をする方法があり、追播でも十分に定着します。
来年度以降に試みてはいかがでしょうか。

写真
実際の草地の写真
撮影時期は10月
10月ごろでこの状態を保っています
写真
同じ草地を近くから撮影した写真
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実際の追播状況の写真
シードマチックという機械を使用しています

放牧の良さをより発揮するには10月一杯は云うに及ばず、11月上中旬までも放牧を行いたいものです。
もちろんその為の準備が必要になってきますが、それを行うメリットは十分にあるのではないかと私は思います。


今回は、今こそ放牧をという内容でコラムを書かせていただきました。全体的なコストが上がってきている今こそ放牧を、と私は思っています。
このコラムが、皆様の何かの参考になれば幸いです。
また、このコラムにてお会いしましょう。

五十嵐 勇