第5回~放牧環境を整える~

快適性アップの放牧地周辺対策

放牧地も日中は、夏では25℃~30℃にもなることが少なくありません。
ホルスタイン種は比較的寒さに強い動物ですが、暑さには弱いのです。
その対策として、全牧区とはいかなくとも庇陰林のある牧区が欲しいものです。
牛のためにもぜひ庇陰林のある牧区を用意してください。

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庇陰林のある放牧地の写真。
写真のような庇陰林のある放牧地で
あれば、日中の日差しが強い時間も
安心です。
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牧区回しの具合にもよりますが、暑熱時には庇陰林のある牧区に放牧するようにしてください。

体温と生産性には高い相関性があり、20℃(体感温度)を境に体温と呼吸数が上昇し乾物摂取量と乳量が減少してきます。
直射日光は外気温以上に体温上昇があるといわれています。
日陰と風通し効果は大切なのです。
また、暑熱時は草を食べてくれませんので、放牧を中止し夜間放牧を重点的に行うことをお勧めします。
そのためにも安心して放牧が行える牧柵が大事になってきます。

牧道を整備する

牧道をしっかりと整備することも大切です。
ニュージーランドでは、牧道をかまぼこ型に盛り上げて作っています。
ここまでしっかりとしたものを整備するのは大変ですが、メインで使う牧道に関してはきちんと整備したいものです。
参考までに、下にニュージーランドの代表的な牧道の写真と、同じように整備した足寄のS牧場の写真を載せました。

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NZでの代表的な牧道
かまぼこ型に盛り上げられた牧道の脇には、
側溝が掘られています。
日本でここまでの牧道を整備するのは大変かもしれませんが、
参考までに写真を載せました。
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NZと同様に整備したS牧場
ニュージーランドの牧道を手本に
実際に整備したS農場の牧道です。
牧道脇には側溝が掘られ、
牧道はかまぼこ型に盛られています。

スノコを使う

ぬかるみが出来て、乳房が汚れるようになっては最悪です。
下の写真に載せたような木製スノコが市販されています。
中には鉄製のもありますが、より高価なものになってしまうかもしれません。

もちろんスノコ自体が安価なものではないので、コストはかかってしまいますが、牛舎の出入り口などには必要になってくるかと思います。

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市販の木製スノコを組み立てた写真
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スノコを埋設し、黒ボクを隙間に詰めている写真

コストはかかりますが、放牧環境を保つためにはぜひ実践したいものです。


さて、今回は放牧環境を整えるということで、庇陰林、牧道の整備などについて書かせていただきました。
確かにコストはかかりますが、牛も人間も快適な環境で酪農を営んでいくという意味では必要なことではないかと思います。
次回のコラム、放牧地の造成・管理でお会いしましょう。

五十嵐 勇